Feb 08 2012
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“ たとえば我々は太陽を見るが、それは厳密に言えば今から8分前の太陽の姿である。遠い丘の上で恋人がこっちに向かって手をふっているのが見える。その丘が1キロメートル向こうだとすると、その恋人の姿は光速の「29万9000キロメートル分の1秒前」の姿である。海外へ電話をすると、相手の答えがほんの少しの間合いでずれるが、あれをもっともっと微細にしたようなことが視覚の世界でも起こっているわけだ。たとえ僕の目の前のテーブル越しに、愛する人が笑っていたとしても、それは「無限分の1秒」過去の笑顔なのである。 人間の実相は刻々と変わっていく。無限分の1秒前よりも無限分の1秒後には、無限分の1だけ愛情が冷めているかもしれない。だから肝心なのは、想う相手をいつでも腕の中に抱きしめていることだ。ぴたりと寄りそって、完全に同じ瞬間を一緒に生きていくことだ。二本の腕はそのためにあるのであって、決して遠くからサヨナラの手をふるためにあるのではない。
~「サヨナラにサヨナラ」中島らも
~「サヨナラにサヨナラ」中島らも
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2009-01-15
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